建物の修繕として大切な防水工事ですが、果たしてどのようにして生まれたのでしょうか。
木造建築が一般的だった昔は、もしかしたら腐ったら取り換えるだけ…なんてことはありません。
その発展や歴史についてご紹介したいと思います。
防水加工の歴史は謎に包まれている
防水工事については、アスファルトや鉄筋コンクリートという物質が建築に使われるようになってから、ようやく発展したという説があります。
確かにそれまで用いていたものと大きく特徴の違う素材ですから、アスファルトなどの防水は約百年前から始まったと言っても良いでしょう。
しかし、木や土といった伝統的なものを用いた建築物において、防水工事が一切されていなかったかというと、そんなことはありません。
歴史上、およそ10世紀頃からその存在が確認される「柿渋(かきしぶ)」などを用いた、防腐・防水加工処理が行われていたと考えられます。
柿渋とは、渋柿を潰した汁を発酵させてつくる液体です。
豊富な「カキタンニン」が含まれるため、特に防腐処理の目的で色々な物に用いられていました。
木工品や木造建築の下地にも使われており、より防水性を高めてきたと考えられています。
水に強い素材を用いる工夫もしていた
更に、今のように後から防水工事を行うのではなく、そもそも水に強い素材を作り出してきたという点についても着目した方が良いでしょう。
具体的には壁に使われる漆喰などがあげられます。
漆喰とは、酸化カルシウム・炭酸カルシウムが豊富に含まれた石灰のことを示し、仕上がりが真っ白になるのが特徴です。
更に熱にも強いという特徴を備えていることから、木や土の壁の上に塗られてきたという歴史があります。
江戸時代の武家屋敷や寺社仏閣を想像すると、一様に真っ白い壁の建物を想像する人が多いでしょうが、それらはおおよそ漆喰で塗られています。
科学的な検証はできなかったとしても、人々は古くから「この素材は風雨に強くて丈夫だ」ということを、経験によって知っていたと考えられます。
アスファルトやコンクリートの防水工事は?
建材がアスファルトやコンクリートに変わってからは、防水工事の方法も大きく変化しました。
「何らかの防水性を持つ塗料を塗ること」はそれまでの歴史と同様ですが、より高い効力を発揮する防水シートを壁に貼るといった方法も一般的になってきています。
ただ、このシートの処理については建築時に対応することが多いので、一般的にメンテナンスの際に行う防水工事は、塗料を散布することで対処されます。
アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素という四種類の他、それらを混ぜ合わせた複合塗料などもあるので、耐用年数と価格を考慮して選ぶことがおすすめされます。
基本的に建物を永久に使うことは困難です。
しかし、歴史的建築物が現存することを見れば分かるように、適切なメンテナンスを繰り返せば、より長持ちすることは確実なのです。